音楽・バレエ教室
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ストリングスアカデミー特別対談③ 田宮 哲&伊藤亮太郎

2023年度に開講した昭和音楽大学附属ストリングスアカデミーは、2025年度よりヤマハの特別協力を受け、子ども向けヴァイオリン(分数楽器)の無償貸与を開始した。成長に応じて必要な楽器の買い替え費用の負担を無くし、より多くの子どもたちが弦楽器に親しめる環境づくりを推進。教育機関と楽器メーカーが連携し、弦楽器人口の分母を増やすと共に、AI時代をも見据え確かな特技を身につけられる次世代育成と音楽文化の普及を目指す。                                            

ヤマハが特別協力、子ども用の楽器を無償貸与

伊藤 こんにちは。ヴァイオリニストの伊藤亮太郎です。今日はヤマハ株式会社の田宮哲さんにお越しいただきました。よろしくお願いいたします。

田宮 ヤマハ株式会社B&O事業部の田宮哲です。伊藤亮太郎先生と対談の機会をいただき、大変嬉しく思っております。よろしくお願いいたします。

伊藤 このたび、ヤマハ様からストリングスアカデミーの生徒たちへ子ども用のヴァイオリン、いわゆる分数楽器を無償で貸与していただけることになりました。「ヴァイオリンを弾いてみたい、習ってみたい!」と願う子どもたちの夢に、手を差し伸べてくださり本当にありがとうございます。

田宮 こちらこそ、ヤマハの楽器をお使いいただけること、大変光栄に思っております。ヴァイオリンは一本一本、人の手で丁寧に作られる楽器です。同じものが二つとない非常に繊細な世界であり、その分どうしても価格も高くなる傾向にあります。世間一般には「弾くのが難しそう…高価で始めづらい」というイメージもあるかと思います。ですが、せっかく「弾いてみたい」と思ってくれたお子さまが、その最初の一歩を踏み出せないのは、とても勿体ないことです。ヤマハとしては、もっと多くの方に弦楽器の魅力を知っていただきたい、そして音楽を奏でる楽しさを体験していただきたい、という思いがあります。御校のストリングスアカデミーが取り組まれている「先ず、子どもたちが楽器と触れる機会を創出する」という理念に私たちも強く共感いたしました。少しでも多くのお子さまやご家庭に「ヴァイオリンって、とても良い音がする、自分でも弾いてみたい!」と感じ、一歩を踏み出していただける環境を一緒に作っていければと願っています

伊藤 本当に素晴らしい取り組みだと思います。私も子どもたちを指導していますが、やはり楽器を入手できるかどうかで最初の入口が大きく変わってきます。「興味があっても、楽器の購入方法が分からない」「高価だけど買ってあげて直ぐ飽きてしまったらどうしよう」と保護者が諦めてしまうケースもあります。今回の無償貸与によって、先ずは楽器に触れてみる、音を出してみる、といった体験が実現できるのは、非常に大きな意味を持つと思います。

楽器は演奏されてこそ 命が吹き込まれる

田宮 私たちは楽器メーカーですが、楽器だけではそこに音楽は生まれません。演奏してくださる方がいて、初めて楽器に命が吹き込まれると考えています。ですから、実際に演奏される皆さまからいただく感想やご意見は、私たちにとって何より大切です。どのような音を感じたか、どんな弾き心地だったのか、どこに難しさを感じたかなど、そうしたフィードバックが、次の楽器づくりへと繋がっていきます。

伊藤 実際に子どもたちが使わせていただきながら「こういう音が好き!」「ここが弾きやすい!」といった声をお伝えできればと思っています。弦楽器のアカデミーと楽器メーカーが一緒に、奏者と楽器を育てる感覚ですね。

田宮 まさにそのとおりです。奏者の皆さまとキャッチボールを重ねながら楽器を磨き上げていくことが、私たちメーカーにとって何より嬉しい瞬間でもあります。

ヤマハ製 ヴァイオリンの特徴

伊藤 貸与していただく楽器について特徴を教えていただけますか。

田宮 今回お貸し出しするのは、2025年にモデルチェンジした「ブラビオール」V5SCC等になります。子ども用の分数楽器は、多くのお子さまにとって人生で初めて出会うヴァイオリンになります。そのため、まずは安心・安全であること、さらに初めて音を出した瞬間「こんなに綺麗な音が出るんだ!」と感じてもらえることを目指して開発しました。安定した品質と豊かな響きを両立させることで、子どもたちが音を出す喜びを感じられる楽器になればと願っています。今回、楽器ケースもこだわりました。以前より軽量コンパクトな設計にしており、小さなお子さまでも無理なく安全に持ち運べる仕様にしました。

伊藤 実際、子どもにとってはケースの重さも大事なんですよね。負担が少しでも軽くなるのはありがたいことです。実は、まだ私が20代の頃にヤマハのヴァイオリン「ブラビオール」の開発に関わらせていただいた時期がありました。その際、全国各地でリサイタルもご一緒させていただいた思い出があるのですが、当時からヤマハの楽器は魅力的で明るい音色を持っていましたね。近年はさらに表現力が増し、さまざまな作品に対応できる深みのある音色へと進化しており、楽器の鳴りが良いので子どもたちにも薦めています。

田宮 ありがとうございます。伊藤先生には長年にわたり、ヤマハの弦楽器開発に多大なるご協力をいただいており、そのご縁がこのような形で続いていることを大変嬉しく思います。

ヤマハだから出せる音や響き

伊藤 ヤマハは「アルティーダ」という上級モデルもありますが、二十年ほど前にはザハール・ブロン先生のお弟子さんが、その楽器を使用して国際コンクールで入賞されたこともあったそうですね。私が個人的に思っていることですが、楽器には各々の個性があります。もちろんストラディバリウスのような歴史的名器を研究することも大切ですが「ヤマハだからこそ出せる音、ヤマハならではの響き」を追求していくことで、新しい楽器の可能性がさらに広がっていくのではと感じます。

田宮 本当にありがたいお言葉です。ヴァイオリンは数百年にわたり、基本的な形を大きく変えることなく受け継がれてきた楽器です。その中で、どのように新しい価値を生み出し、その伝統を次代に継承していくかが、現代の楽器メーカーに求められている使命だと思っています。実際に演奏される皆さまからの声を大切にしながら「これからの時代に求められる楽器とは何か」を模索し続けていきたいと思っています。

楽器の構造を知る体験会

伊藤 ヴァイオリンの無償貸与に加えて、楽器のメンテナンス時には「楽器の構造を知る体験会」も実施していただいてますね。

田宮 はい。これは御校からのご提案がきっかけでした。「小さなお子さまが楽器を学ぶうえで、演奏技術だけでなく楽器の構造についても理解を深めることで、より豊かな成長につながるのではないか」というお考えに共感し、喜んでお引き受けしました。そこで、ヤマハ銀座店の弦楽器工房とも連携しメンテナンスの機会を活用し、親子で参加できる「楽器の構造を知る体験会」を実施しております。御校とのコラボ企画ですね。

伊藤 楽器の仕組みを理解したうえで演奏すると、音への向き合い方も変わってきますよね。実際に、アカデミーの生徒さんや保護者の皆さまからも大変好評でして、ぜひ今後も継続していただければと思います。

田宮 演奏技術の習得だけでなく、楽器そのものへの理解や愛着を深めていただけるような取り組みを、今後も続けてまいりましょう。

伊藤 この取り組みを通して、子どもたちがヴァイオリンと出会い、音楽の喜びを感じてくれることを心から願っています。ありがとうございました。

田宮 相互にとって良い未来を築ければ幸いです。ありがとうございました。

特別協力=ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン
取材  文  写真=昭和音楽大学ストリングスアカデミー運営室

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