2026年8月6日(木)『フェスタサマーミューザKAWASAKI2026「昭和音楽大学」』
【公演レビュー】フェスタサマーミューザKAWASAKI2026「昭和音楽大学」
©増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮
梅田 俊明
演奏
昭和音楽大学管弦楽団
テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
プログラム
ベートーヴェン:序曲『レオノーレ』第3番 ハ長調 op. 72b
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 op. 60
ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』
公演レビュー
前半ベートーヴェン、後半ストラヴィンスキーという組み合わせは、一見変哲もない名曲の組み合わせのようでいて、非常によく考えられたプログラムといえる。
ふたりとも、音楽史における革命家であり、次の時代を切り拓いた巨人である。
前半は古典主義の時代からロマン派の時代にかけての、後半はロマン派の終わりとモダニズムの幕開けを象徴するオーケストラ美学。
その対照的な響きを楽しむことができた。
ベートーヴェンの序曲「レオノーレ」第3番は、巨大で劇的な構えの序奏に続いて、弦で静かに始まる主題の立体感が印象的。録音ではあまり聴こえないようなヴィオラの刻みの音もはっきりと聴こえる。このアンサンブルは、密集しながらお互いの音をよく聴きあう室内楽の美点を感じさせた。
オペラの劇中では大臣の到着を知らせる場面で出てくる、トランペットのファンファーレが袖から鳴り響いてくる箇所は、余裕すら感じさせるほどに完璧だった。フルートの長いソロも美しくきらびやかな音色が冴えた。
続いての「交響曲第4番変ロ長調」は、やはり弦の合奏を中心にした密度の濃い響きが展開する。そこにチャーミングな木管の表情が添えられ、要所を金管とティンパニが引き締める。
たとえば第3楽章の終結部で、一瞬だけホルンが強調されたが、このあたりの造形感覚の強烈さにもハッとさせられるものがあった。
後半はストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」。
良く知られた名曲ではあっても、綱渡り的な瞬間の頻出する永遠の難曲ともいえるこの作品を、昭和音楽大学管弦楽団とテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラの合同編成オケは、高度な技術と集中力で見事に演奏した。
冒頭の長く難しいソロを奏するファゴットをはじめとする木管の巧みさ、エネルギッシュで表情豊かな弦、前半と比べると大幅に増強された打楽器と金管楽器が織りなす、プリミティヴで力強い、艶やかな音色――手に汗握る輝かしい演奏を堪能した。
おそらく相当充実したリハーサルを重ねてきたのだろう、誠実で確かな指揮によって全体のアンサンブルを見事に牽引した指揮者・梅田俊明を、終演後のオーケストラは足を踏み鳴らして心から称えた。
©増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール
©増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール
©増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール
©増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール
筆者紹介
林田 直樹 Naoki Hayashida
埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。


