音楽・バレエ教室
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ニュース
2021/09/09
お知らせ

【公演レビュー】フェスタサマーミューザKAWASAKI2021昭和音楽大学管弦楽団×テアトロ・ジーリオ・ショウワオーケストラ

8/8(日)フェスタサマーミューザKAWASAKI2021 昭和音楽大学管弦楽団×テアトロ・ジーリオ・ショウワオーケストラがミューザ川崎シンフォニーホールにて開催されました。

フェスタサマー03

指揮

山下 一史

プログラム

ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
ベートーヴェン:交響曲 第8番
ストラヴィンスキー:サーカス・ポルカ
ストラヴィンスキー:花火
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」組曲(1919年版)

出演

昭和音楽大学管弦楽団
テアトロ・ジーリオ・ショウワオーケストラ

【公演レビュー】

取材・文 林田 直樹
ベートーヴェンとストラヴィンスキーを組み合わせた今回のコンサートは、200年前と100年前に活躍していた二人の作曲家が、いかにオーケストラ音楽史における革命家であったかを振り返る上で、示唆に富んだ好プログラムであった。
前半はベートーヴェン。近頃流行の古楽系解釈ではなく、昔ながらの安定感ある重厚な響きによる正攻法の演奏で、「コリオラン」序曲の重々しい悲劇性、「交響曲第8番」のユーモアと愉悦――ベートーヴェンの二つの対照的な性格――が、ミューザ川崎の美しい音響を得て、格調高く伝わってきた。特に第3楽章のトリオでのホルンとクラリネットとチェロの掛け合いの織りなす平和で牧歌的な雰囲気は印象に残った。
後半はストラヴィンスキー。ブラスが増強された近代的オーケストレーションの色彩感と迫力が存分に発揮された。「サーカス・ポルカ」ではシューベルトの「軍隊行進曲」のパロディ風の遊びの精神が面白く、フルートとピッコロに導かれて開始する「花火」の輝くような音色の変化も見事だった。
「火の鳥」組曲(1919年版)は、曲が進むにつれて演奏がどんどん熱を帯び、生気ある音の表情、自在なテンポの変化で、聴き手をぐいぐいと惹きつける迫力があった。第4曲「王女たちのロンド」でのオーボエに始まる旋律の甘美さは特に聴かせた。
なお、当日の公演のみならず、後日、ミューザ川崎によるアーカイヴ動画配信も視聴したが、オフステージのリラックスした楽団員の表情もカメラで捉えられており、良好なコンディションで演奏に臨んだことが伝わってきた。山下一史の的確な指揮とオケとのコミュニケーションの様子も興味深く、特に「火の鳥」の第6曲「子守歌」でファゴットが憂いある旋律を奏でているときに、思わず山下がカラヤンのように目を閉じて満足気に聴き入る表情は、この演奏の成功を最も裏付ける映像だった。
世界最高のコンサートホールのひとつであるミューザ川崎シンフォニーホールが主催する「フェスタサマーミューザKAWASAKI」は、首都圏のみならず地方も含めた錚々たるプロ・オーケストラが集結する、最大規模の祭典である。その中にあって、他楽団に全く遜色ない堂々たる演奏をこうして繰り広げたことは、大きな実績といえる。

フェスタサマー02

<写真>撮影:青柳 聡 提供:ミューザ川崎シンフォニーホール

筆者紹介

林田 直樹 Naoki Hayashida

埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。

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