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ニュース
2022/03/16
お知らせ

【公演レビュー】大学院2021年度修士課程修了オペラ公演

2022年2月13日(日)昭和音楽大学大学院2021年度修士課程修了オペラ公演をテアトロ・ジーリオ・ショウワにて開催しました。リハーサル・本番と、どの段階においても万全の感染防止対策を講じ、無事に終えることができました。

プログラム

《第1部》指揮:大勝秀也 演出:岩田達宗
G.ロッシーニ/オペラ「セビリアの理髪師」(抜粋)
G.ドニゼッティ/オペラ「ドン・パスクワーレ」(抜粋)

《第2部》指揮:時任康文 演出:岩田達宗
V.ベッリーニ/オペラ「カプレーティ家とモンテッキ家」(抜粋)

《第3部》指揮:飯坂純 演出:岩田達宗
G.ドニゼッティ/オペラ「ドン・パスクワーレ」(抜粋)
G.ドニゼッティ/オペラ「リタ」
V.ベッリーニ/オペラ「カプレーティ家とモンテッキ家」(抜粋)



 

【公演レビュー】

取材・文 林田 直樹
ロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニの3人に代表される19世紀前半イタリアのベルカント・オペラを重視することは、開学以来オペラを得意としてきた、昭和音楽大学の大切な伝統である。それはクラシック音楽におけるすべての声楽作品を演奏する上でのベースとなるものであり、これをしっかり学ぶことが、日本の若い声楽家を育成する上で、もっとも適切な道であるという信念。それがいまも強固に守られていることを、改めて実感できる公演だった。
今回の3部構成の公演は、上記の作曲家たちのオペラからの名場面集。シンプルな舞台装置のもと細やかな演出(岩田達宗)が加わったおかげで、アリアや重唱のみならずレチタティーヴォでの演劇的な表現にも工夫が凝らされ、10名の修了生たちにとってハイレヴェルな挑戦となっていた。
ピットにはコレペティートルのピアノがオーケストラの代わりとして音楽的役割を果たし、3人もの指揮者が交代制で務めるという手厚いサポートぶり。声楽専攻の学生有志も合唱で出演し、舞台スタッフコースの学生も制作に加わり舞台を盛り上げた。
それにしても、コロナ禍の制約下で修練するのは学生たちも大変だったはずである。それでも乗り越えようとする意気込みが伝わってきて、こちらも思わず応援したくなる気持ちで聴いた。

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第1部(指揮:大勝秀也)は、ロッシーニ「セビリアの理髪師」からの抜粋では、東那岐(アルマヴィーヴァ伯爵)は醸しだす雰囲気の良さ、石谷莉奈(ロジーナ)はバランスの良い歌唱。ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」からの抜粋では、上野由貴(ノリーナ)の声そのものの美しさが、それぞれ印象に残った。

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第2部(指揮:時任康文)は、ベッリーニ「カプレーティ家とモンテッキ家」からの抜粋。山本睦(ロメオ)と男山俊太郎(テバルド)は懸命にやり遂げる精神力、白砂智子(ジュリエッタ)は高い技術と豊麗な声が良かった。

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第3部(指揮:飯坂純)は、ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」からの抜粋では、久野ひかる(ノリーナ)の舞台勘の良さとコケットリーの巧みさ。同じくドニゼッティの「リタ」からの抜粋では、三浦夏海(リタ)の性格描写の的確さ、小山健太郎(ベッペ)のコミカルな明るさが、とても楽しめた。ベッリーニ「カプレーティ家とモンテッキ家」からの抜粋は第2部とラストシーンが重なる趣向も興味深く、山口はる絵(ジュリエッタ)の一途さもしっかり伝わった。
各演目で脇を固めるキャストには、4演目に登場したバス・バリトン後藤春馬、3演目に登場したバリトン市川宥一郎など、実力派歌手たちが多数賛助出演したことも、今回の公演を充実感あるものにしていた。

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全体を通して思ったのは、やはりベルカント・オペラとは、声そのものの楽器としての完成度、そして言葉と結びついた人間感情の豊かさを過酷なまでに問う、何と厳しい世界だろうかということだった。それだけに、これらの作品群は、演奏者のみならず聴き手をも、成長させてくれる、かけがえのない宝物でもある。

筆者紹介

林田 直樹 Naoki Hayashida

埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。

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