音楽・バレエ教室
  • 公式X
  • 公式Facebook
  • 公式Instagram
  • 公式You Tube
  • 公式LINE
ニュース
2022/03/18
お知らせ

【公演レビュー】ジャズコース/ポピュラー音楽コース2021年度卒業ライブ

2022年2月27日(日)ジャズコース/ポピュラー音楽コース2021年度卒業ライブをテアトロ・ジーリオ・ショウワにて開催しました。リハーサル・本番と、どの段階においても万全の感染防止対策を講じ、無事に終えることができました。

【公演レビュー】

取材・文 林田 直樹
アメリカの音楽学校では、ジャズはもはや「保存されるべき伝統芸能」として扱われていると聞いたことがある。それは日本でも同様で、1960年代生まれの筆者にとって、青少年時代を過ごした懐かしい「昭和歌謡メドレー」が第4部で歌われるのを面映ゆい思いで聴きながら、これはもはや保存され学習され研究されるべき伝統になっているのかもしれないと思った。
と同時に、いつ生まれたのかということと関係なしに、現代の若者たちが昭和歌謡を心から共感しながら歌ってくれるのであれば、世代をこえてこんなにうれしいことはない、とも思った。たとえば最後に歌われた中島みゆき「時代」がそうだ。いまこんな苦しい状況にあったとしても、いつか「そんな時代もあったねと」言えるときが来るのを信じて、くよくよせず今日の風に吹かれるしかない。そんな共感性が広がっていくコンサートだった。

第1部と第2部は、ツイン・ドラムやバックコーラス、ギタリストやキーボード奏者たちなど、できるだけ全員参加を意識したステージングで、洋楽と邦楽のポピュラー系カバー曲とオリジナル曲をミックスした構成。オリジナルでは武山梨緒「4月31日」はアニメのキャラクターを思わせるユニークな世界観が面白く、鈴木夏菜&武富萌空「杏」は良質のバラードで、陳元汐の卓越した歌唱力には驚かされた。西山ケイン&今泉七葉「メリーゴーランド」は変化に富む曲の構成にポテンシャルを感じた。曲間のトークで「ポピュラー音楽の中にジャズの要素が増えている」のでそれを学べてよかったという意味の西山の発言があったが、全くその通りで、多様なスタイルの音楽を包摂することで、曲作りに深みが出てくる、そのきっかけを得られることが昭和音大で学ぶ大きなメリットの一つだろう。

第3部はジャズ。とりわけビッグバンドメドレーのパートでの各奏者の技量の高さは明らかで、ブラスの迫力や艶も気持ちよく、全体のグルーブ感やノリの良さにも優れ、いま日本の音楽界で最も可能性のあるジャンルではないかとの印象を強くした。ギター山下裕基のオリジナル曲も光るものがあった。
ステージ上に立つパフォーマーにとって最も大切なのは、いかなる条件下においても、自由に生きる人間として振る舞い、その自由のまぶしい風を客席に届けることである。大変な時代であればあるほど、それこそが社会の中でジャズやポピュラーが課されている重要な使命だと筆者は思うのだが、皆さんはどう思われるだろうか?

なお、今回のステージも他の公演と同様、舞台スタッフコースやアートマネジメントコースの学生が制作に加わり、教員の指導のもと運営を担っていた。コロナ対策への配慮も行き届いたものがあり、安心して楽しむことができた。

筆者紹介

林田 直樹 Naoki Hayashida

埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。

関連コンテンツ

Page TOP