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ニュース
2022/07/10
お知らせ

【公演レビュー】吹奏楽団 昭和ウインド・シンフォニー第23回定期演奏会

6/4(土)吹奏楽団 昭和ウインド・シンフォニー第23回定期演奏会が昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワにて開催されました。

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指揮

福本 信太郎

プログラム

ジェイムズ・デイヴィッド/アーバン ライト  ※日本初演
高 昌帥/エレウテリア
ポール・ドゥーリィ/カンティクル ※日本初演
オマール・トーマス/カム サンデイ
ジャック・フリラー/オン・アゲイン、オフ・アゲイン ※日本初演
フランク・ティケリ/永遠の光 ※日本初演
オスカル・ナバロ/”ヒスパニア”吹奏楽のためのスペイン幻想曲 ※日本初演

出演

昭和ウインド・シンフォニー

【公演レビュー】

取材・文 林田 直樹
この日は、指揮をする予定だったユージーン・コーポロン氏が火山噴火の影響による航空機のトラブルで来日できなくなり、福本信太郎教授が全曲を指揮した。
 7曲のプログラムのうち5曲が日本初演。こうしたことは、通常のオーケストラ・コンサートではほとんどない。いかに吹奏楽というジャンルに活気があり、新しい楽曲が盛んに提供され、またそれが求められているかということの表れだろう。
 ジェイムズ・デイヴィッド「アーバン・ライト」(日本初演)は、ロサンジェルスの美術館にある彫刻の集合体をモチーフにした作品。ジョン・アダムズを思わせるリズムの連鎖と明るい響きが特徴。颯爽と引き締まった、一糸乱れぬ演奏。
 高昌帥(コウ・チャンス)「エレウテリア」は、ブルックナー的なスケール感と息の長さに魅了された。各セクションにもそれぞれ見せ場が用意されていて、楽しく聴けた。
 ポール・ドゥーリィ「カンティクル」(日本初演)は、一転して祈りの音楽。静かな部分における抒情性、管楽器ならではの音色の味わいの変化を堪能した。
 オマール・トーマス「カム・サンデイ」は、ジャズの要素が濃厚で、礼拝の場におけるハモンド・オルガンへのトリビュートというから、ゴスペル的な作品ともいえる。冒頭のサックスのソロが見事で、それを全員が静かに聴きいるところから、フルート等に引き継がれ、底抜けの陽気さ、ノリの良さへと盛り上がっていく。何とも幸福な余韻。
 ジャック・フリラー「オン・アゲイン、オフ・アゲイン」(日本初演)は、ニューヨークの地下鉄を題材とした作品。ユーモラスな仕掛け、多様な音色による疾走感、スピードの変化。鉄道好きにはたまらない、楽しい作品と演奏。また聴いてみたい。
 フランク・ティケリ「永遠の光」(日本初演)は、一転して内省的な祈りの音楽。コープランド風の広がりあるしみじみとした情趣の中で、打楽器が織りなすキラキラした音、弱音の美しさが印象的だった。
 オスカル・ナバロ「“ヒスパニア”吹奏楽のためのスペイン幻想曲」(日本初演)は、唯一のヨーロッパの作品。ギター2名、カスタネット2名、カホン2名が加わって、フラメンコの要素を吹奏楽の中で展開させる創意が面白い。響きのバランスが良いので、ハープの小さな音さえも、はっきりと客席でも聞き取れた。
 アンコールは、オマール・トーマス「革命の母」(楽曲を支えるリズム隊が見事)、ブルース・ブロートン「フラリッシュ」。どちらも日本初演で、特に後者はこの2月に世界初演されたばかりの作品。既知のものばかりでなく、未知の新しい動向をリサーチしていち早く反映しようとする姿勢は素晴らしい。


福本信太郎教授の指揮は、抑制的で無駄のない統率で、決して命令的でなく、各奏者たちの自発性にも委ねる雰囲気があり、学生たちも高い技術と集中力で応える。音楽的な満足度の非常に高いコンサートを堪能した。

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筆者紹介

林田 直樹 Naoki Hayashida

埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。

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