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ニュース
2022/07/15
お知らせ

【公演レビュー】テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ第25回定期演奏会

7/9(土)テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ第25回定期演奏会を開催しました。

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プログラム

W. A. モーツァルト/オペラ《フィガロの結婚》序曲K.492
W. A. モーツァルト/交響曲第40番ト短調 K.550
B.バルトーク/管弦楽のための協奏曲 BB123

指揮

現田 茂夫

管弦楽

テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ

【公演レビュー】

取材・文 林田 直樹
近年はモーツァルトというと、古楽的でスパイシーな演奏が主流をなしているが、ひさしぶりに昔ながらのロマンティックなタイプの演奏を聴いた。とりわけオペラに豊富な実績を持つ現田茂夫の指揮。
1曲目がオペラ「フィガロの結婚」序曲、これは2019年の大学オペラの舞台が記憶にも新しいし、今年の10月にも予定されている演目でもあるが、そのときの指揮者ニコラ・パスコフスキの急速なテンポ、ドライな響きとは何たる違いであろう。ゆったりと鷹揚に、奇をてらわない現田のタクトのもと、フル編成の弦楽セクションの厚みある響き(コントラバス4名)のなかで、木管が明滅する。2曲目の「交響曲第40番」も同様で、これは令和の今どきのクラシックではなく、懐かしの昭和のクラシックという印象を持った。これはこれで、流行におもねらない一つの解釈のあり方であり、時代を超えて続けていくべきスタイルだろう。

後半のバルトーク「管弦楽のための協奏曲」は、同じ人数の弦楽セクションの上に管と打楽器が加わる。その気になればいくらでもスピードアップできる技量もあるに違いないこのオーケストラだが、現田の指揮は、ていねいに、決して急ぎすぎることなく、いたずらに音圧に頼ることなく、丹念にアンサンブルをまとめる。第5楽章の中ほどで一度指揮台からジャンプしたのも、感極まったというよりは、ゆとりゆえの跳躍と感じられた。弦中心の響きのなかで、金管を抑制させて、音色のバランスをとっていく。フルートやクラリネットなど、木管奏者たちの表情の美しさも際立っていた。
モーツァルトとバルトークの作品の間には、およそ160年の隔たりがある。その間にオーケストラという楽器がいかに拡大し、高機能化したか。楽曲の様式も、古典的な美学から、いかに多文化的なものへと複雑化していったか。その違いを、一つのプログラムのなかで実感できるコンサートであった。

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筆者紹介

林田 直樹 Naoki Hayashida

埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。

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