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ニュース
2023/07/13
お知らせ

【公演レビュー】室内合奏団第13回定期演奏会

2023年6月24日(土)「室内合奏団第13回定期演奏会」が昭和音楽大学ユリホールにて開催されました。

室内合奏団第13回定期演奏会02

演奏

昭和音楽大学室内合奏団

スーパーヴァイザー

篠崎史紀(昭和音楽大学特任教授)

プログラム

W.Aモーツァルト/3つのディヴェルティメント

P.チャイコフスキー/弦楽セレナーデOp.48

公演レビュー

弦楽器専攻生から選抜されたメンバーによる室内オーケストラで、弦楽アンサンブルのために書かれたモーツァルトとチャイコフスキーの名作を聴いた。

前半は、モーツァルト「ディヴェルティメント」K.1361383曲を続けて演奏。ニ長調、変ロ長調、ヘ長調と続けて聴くことで、3楽章、3曲、合計9つの楽章を生演奏でじっくりと集中的に体験できた。案外こういう機会は貴重かもしれない。

これらは1772年、16歳のモーツァルトの手による作品だが、どれもメヌエット楽章がなく、引き締まった3つの楽章の連なりには、駆け抜けていく青春の息吹きのような趣がある。喜びも憂いも、のちのオペラの萌芽も感じさせ、モーツァルトのすべてが既にここにあるとさえ思えてくる。とりわけK.138の第3楽章プレストは内容が濃く、ここに向かってピークが形成されていく観があった。

指揮者なしのアンサンブル、チェロを除いて全員が立ったままの演奏スタイルからは、個々の自発性を引き出そうという指導者側の意図が感じられた。それが一層成功していたのが、コンサートマスターを石黒響平から淵野日奈子へと交替して同一編成で演奏された後半のチャイコフスキー「弦楽セレナード」である。

「交響曲第4番」や「白鳥の湖」をすでに仕上げて円熟の境地を迎えつつあったチャイコフスキーが、モーツァルトのスタイルを意識しながらも、厚みを持ってドラマティックに書いている、1880年(40歳)の作品である。各パートは万遍なく主張し、第2ヴァイオリンやヴィオラも美しい旋律を受け持つ場面も多い。アンサンブルの求心力も高まって、この合奏団自体がこの楽曲に良い意味で「食いついている」と思えた。

解釈も個性的なところがいくつかあって、たとえば第1楽章の冒頭主題の歌わせ方も、ハッと思わせるようなアーティキュレーションがあった。どこで音を伸ばし、どこで切るか。言葉を話すような明快さが良かった。ワルツの終結部はじっくりとテンポを落とし、しみじみとした余韻を際立たせて印象的だった。

アンコールは、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の第3楽章。ソロを各人が次々と受け渡していく様子は、即興的な遊び心とともに、アンサンブルの連帯の中でも、ひとりひとりが独立的な音楽家でありたい、というメッセージを感じさせた。(取材・文 林田 直樹)

室内合奏団第13回定期演奏会01

筆者紹介

林田 直樹 Naoki Hayashida

埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。

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