2023年10月29日(日)楽演祭Vol.7がテアトロ・ジーリオ・ショウワにて開催されました。この公演は本学全コースの学生が履修可能となっている授業科目「ライブビジネスと社会」との連携企画で今回が7回目の開催となりました。
【公演レビュー】木村カエラ×ホリエアツシ(ストレイテナー)楽演祭Vol.7(2023.10.29)
公演の詳しいレポートはこちら(楽演祭公式ウェブサイト)
公演レビュー
これは本当に素晴らしい企画だと思った。
ポップスのフィールドから超豪華な2組のアーティストを招き、スペシャルトーク&ライブ・セッションの2部構成で楽しむ「楽演祭」は、(株)KADOKAWA/昭和音楽大学/一般社団法人コンサートプロモーターズ協会の主催により2018年に開始され、年に2本ほどのペースで開催されてきた。
そのうちVol.7を体験することができた。開催からは随分時間がたってしまったが、ぜひともその様子を少しだけでもここでもご報告したい。
舞台に立つという意味では、ポップスもクラシックも、音楽も演劇も同じである。舞台のプロから学ぶべき点は、必ずある。そういう意味でも、ジャンルは関係なく、ここは大いに意義ある学びの場になっていた。そして、アーティストのことをたとえよく知らなかったとしても、後半のライブ・セッションを楽しむうちに、すっかりファンになってしまうような流れになっていたのも良かった。
ついで、「ボーカリストとして心がけていることは?」「アーティストって何?」「音楽遍歴は?」「歌詞はどうやって作る?」「クリエイティブの裏側は?」というふうに、設問ごとに楽しいトークが対談形式で繰り広げられた。
とりわけボーカリストとしての心がけについては、クラシックにも当てはまるのではと思えるような深い発言がたくさんあった。二人が口を揃えていたのは、身体も心も良好なコンディションに整えることの重要性である。
尖っていてもひねくれていてもいいから、十代の頃に好きな音楽に夢中になること。歌詞の意味は押し付けるものではなく、人それぞれが感じるものであること。裏方みんながいないと舞台は成り立たず、一人残さず全員が気持ちよく仕事できる環境であること。幸せの瞬間はすぐに過ぎてしまうものであり、だからこそ今この瞬間を大事にするべきであること…。このトークは多くの学生たちの心に残ったに違いない。
ライブが終わって帰ってから、二人の音楽をYouTubeで探して聴いてみて、さらに好きになった。いまのポップスの面白さを初心者にも深く知ることのできる「楽演祭」は、あらゆる音楽好きにとっての良き道しるべのような企画として続いていって欲しい。
※…全コースの学生が履修可能となっている授業科目「ライブビジネスと社会」
筆者紹介
林田 直樹 Naoki Hayashida
埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。