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ニュース
2026/01/23
お知らせ

【公演レビュー】2025年12月6日昭和音楽大学吹奏楽団第39回定期演奏会

2025年12月6日昭和音楽大学吹奏楽団 第39回定期演奏会がテアトロ・ジーリオ・ショウワにて行われました。

吹奏楽定期_01

指揮

時任 康文

演奏

昭和音楽大学吹奏楽団

昭和音楽大学、同短期大学部、大学院において弦・管・打楽器を専攻する学生で編成された吹奏楽団。世界各国の新作を中心に「芸術性の高い吹奏楽作品」に取り組み、ウインド・ミュージックのジャンルが持つアーティステックな可能性を追求している。専門科目の授業内で練習を重ね、定期演奏会及び学内外の演奏会にて発表の場を持ち、また学生の自主公演など幅広く活動している。2015年にはアメリカ・カリフォルニア州サンノゼで開催された「世界吹奏楽大会2015」日本代表として招かれ出場。プロまたはそれに準じたレベルと認められ、最終日には2時間の演奏枠で出場し、世界の吹奏楽関係者を魅了した。定期演奏会の指揮者には国内外から著名な吹奏楽指導者を招聘。これまでに、エリック・バンクス、アントニン・キューネル、ユージーン・M・コーポロン等を迎えている。「昭和ウインド・シンフォニー」としては、2000年より毎年公演を重ね、ライブ録音CD(第24弾『グリム童話/ブルース・ブロートン』)を近日リリース予定。またブレーン㈱による『全日本吹奏楽コンクール課題曲クリニックDVD』において2009~2019年及び2021年のモデルバンドを務めており、日本吹奏楽指導者協会(JBA)総会での演奏会が好評を博すなど、日本全国の吹奏楽指導者からも注目されている。これまでに東京佼成W.O.、シエナW.O.、大阪市音楽団、東京吹奏楽団をはじめとする多くの演奏団体に卒業生を輩出している。

プログラム

ウィリアム・ウォルトン
 戴冠行進曲「王冠」

ロバート・ラッセル・ベネット
 バンドのための「シンフォニック ソング」

ディヴィッド・ホルジンガー
 春になって、王達が戦いに出るに及んで

ジョン・マッキー
 オーロラの目覚め

オーウェン・リード
 メキシコの祭り

公演レビュー

昭和音楽大学吹奏楽団の演奏をしばしば聴くようになって改めて思うのは、コンクールやアマチュアに支えられた日本の吹奏楽文化において、これから大切にしていかなければいけないこと――吹奏楽そのものの芸術性を深め、より多くの一般的な音楽ファンに普及していく使命――を、彼らは担っているのではないかということだ。

今回のプログラムを指揮した時任康文(本学教授)は、オペラと吹奏楽の両方に長年充実したキャリアを積んできており、こうした方針にとって得難い存在といえる。

 

1曲目は、20世紀英国を代表する作曲家の一人でオーケストラ音楽の達人だったウィリアム・ウォルトン(1902-83)の名作「戴冠行進曲《王冠》」を、デュソイトが吹奏楽に編曲した版。抑制された響きから勇壮な盛り上がりまでメリハリがあり、チューバとトランペットの艶やさが印象に残った。

ロバート・ラッセル・ベネット(1894-1981)はブロードウェイ・ミュージカルのオーケストラ編曲で特に知られるアメリカの作曲家で、ジョージ・ガーシュウィンやリチャード・ロジャーズの作品に格調高さと深みをもたらした重要人物である。「バンドのための《シンフォニック・ソング》」は「セレナーデ」「スピリチュアル」「セレブレーション」の3つの部分からなる色彩感豊かな作品。特に「セレブレーション」の祝祭的なパレードの賑やかさの何と楽しいことか。

同じくアメリカの作曲家デイヴィッド・ホルジンガー(1945-)の《春になって、王たちが戦いに出るに及んで》は、冒頭、ストラヴィンスキーの《春の祭典》を思わせる不協和音の生命力と演奏者の発する不思議な声に驚かされる。曲の展開は波乱万丈で、次の展開の読めないワクワク感と映画音楽のようなスリルと親しみやすさがある。一糸乱れぬアンサンブルは、日々の訓練の積み重ねを雄弁に物語っていた。

休憩後の後半は、アメリカの作曲家ジョン・マッキー(1973-)の「オーロラの目覚め」。現代音楽の巨匠コリリアーノに学んだ経歴を持つだけに、洗練されたセンスの良い響きに魅力があり、ミニマル・ミュージックの影響も感じた。静寂な部分のクラリネット・ソロの味わい、リズム・セクションの細やかな安定感も良かった。これは、生き生きとした時間を内包した音の風景画である。

アメリカの作曲家ハーバート・オーウェン・リード(1910-2014)の交響曲《メキシコの祭り》は、「前奏曲とアズテック・ダンス」「ミサ」「カーニヴァル」の3つの楽章から成る。冒頭の鐘の連打と金管群の勇ましい響きは、メキシコの先住民の誇りを思わせるし、「ミサ」での静かなハーモニーのバランスも印象的。「カーニヴァル」でのカラフルなノリのいい音楽は実に効果的。メキシコの過去と現在、異なる宗教や文化の共存というメッセージを感じさせた。

全体を通じて、時任康文のタクトのもと、昭和音楽大学吹奏楽団ならではのチームプレーの見事さ、ソロの技量の高さは際立っていた。

 

吹奏楽の芸術性と奥深さを伝えるプログラムの後のアンコールは4曲。フィルモア《サーカス・ビー》、エルガー(リード編)《ニムロッド》、アンダーソン《そりすべり》、バッハ《主よ、人の望みの喜びよ》。

愉快なお祭り感、楽しく若いエネルギー溢れる演奏家たちの様子、しみじみとした広がり。1曲ごとの曲調のコントラストはさすが。クリスマスを控えた季節に最高の音楽的な時間を過ごさせてもらった。

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撮影

増田 雄介

筆者紹介

林田 直樹 Naoki Hayashida

埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバーまで、近年では美術や文学なども含む、幅広い分野で取材・著述活動を行なう。

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